広告運用インハウス化の難しさ
従来、リスティング広告をはじめとしたWeb広告は、専門の代理店に任せる風潮がありました。しかしながら近年はアドテクノロジー、とりわけ広告媒体側による「運用改善自動化」の発展に伴い、広告運用のインハウス化を検討する企業が増えているように感じられます。本来の担当業務ではないにも関わらず、Web広告に関して高度な知識をもち、運用に取り組む方と出会う機会も珍しくありません。
それでもなお止まない広告運用のご相談。その最も大きな要因は、「運用にかけられるリソースが不足している」点にあります。高度な知見をもってしても、さまざまな指標から広告運用状況を把握し、改善施策を検討、実行に移すには相応の時間を要するもの。インハウス化を目標にWeb広告について理解を深めるほど「専任の担当者を設置する」重要性を感じるという、ある種のジレンマが広告運用には存在しています。
今回問い合わせいただいた建築資材メーカーの運用担当者様もその一人。自身でもWeb広告のノウハウを持ちつつも、より高度な運用改善に取り組むにあたって広告運用代行の相談をいただきました。
運用分析とユーザー理解の両面アプローチ
初回のヒアリング終了後に弊社が依頼したのは広告運用状況の共有です。一定期間リスティング広告の運用に取り組んだ企業様であれば、管理画面を見るだけでこれまでのアクションや現状の課題は一目瞭然。提案に際して、この情報を参考にしない手はありません。
しかしながら、データに基づく運用分析だけでは不十分。なぜなら、それだけでは「ユーザーの目線」が不足しているからです。ユーザーがどのような悩みを抱えて商品にたどり着くのか、どのような場面で商品を用いて、何のメリットを得られるのか。専門的な商材であればあるほど、代理店もそれらを正しく理解するのは難しいでしょう。実際に、対象となった商材は、建設現場で発生する「特定の状況」にて大きなメリットを発揮するものといった、極めて専門性の高いものでした。
管理画面のデータから効果の高いキーワードや運用改善策を導きつつ、打ち合わせを重ねることで建設業界における課題やユーザーの思考を掴む。結果として、キーワード選定は適切ながら、アカウント構成や広告文に改善点を見出し提案、運用をお任せいただきました。
CVRを左右するランディングページ
運用開始から約半年、クリック率やクリック単価で一定の運用改善が見られたものの、問い合わせ数やその背景にある問い合わせ率(CVR)、そして獲得単価を大きく改善するには至りませんでした。そこで次なる改善策として提案したのは、ランディングページの新規作成です。
商材に興味をもち、広告をクリックしたユーザーであっても、「お目当ての情報」がすぐに見つからない、あるいは理解できなければ、いとも簡単に離脱をしてしまいます。そこで、当初は自社サイトのトップページへと誘導していたところに、新しくランディングページを作成した結果、頂いた運用手数料を加味してもなお従来を上回るコストパフォーマンスを発揮できました。
「なぜランディングページを最初から作らなかったのか?」という疑問もあるかもしれません。たしかに、最初からランディングページを作成することで早期改善に繋がる可能性はあります。一方で、十分な運用データや業界理解がないままランディングページを作成すると、「費用をかけて作ったにもかかわらず成果が出ない」リスクも大きいものです。
TOPページへ誘導している状態でも一定の問い合わせが発生していた、広告文のクリック率の差による「ユーザーの興味」が十分に測れていなかったなどの状況を踏まえて、運用後半年のタイミングで制作に踏み切りました。逆に言えば、運用データと業界理解が十分に揃った場合、ランディングページの制作がCVR改善の特効薬たると弊社は考えています。