「素晴らしいWebサイト」が必須なわけではない
「Webサイトは企業の顔」とはいうものの、必ずしも多数のページを揃え、技巧を凝らしたWebサイトが必要なわけではありません。あくまで対面でのコミュニケーションが最重要、Webサイトは会社情報や所在地だけ見れればいい…そのような業界は少なくないでしょう。「素晴らしいWebサイトへリニューアルすれば、商談は増える」という考えは時に傲慢となりえます。
「ユーザーにとってマイナスにならない印象のWebサイトがあれば良い」とWebサイトリニューアルの相談をお寄せになったのが、創業60年を超える機械部品商社。「商談はほぼ全て営業が取ってきている」とは話しつつも、Webサイトがあまりに古く、企業情報を調べた際に取引先が懸念を感じてしまうとお悩みでした。
最低限、不安を与えないようなデザインに加え、取り扱い商品の変更や追加に関する情報発信が可能なWebサイトへとリニューアルしたい。この目的を叶えつつ、コストを抑えるために不要な機能を削ぎ落とすアプローチも時に必要となります。
ページ数と機能に正しい優先順位を
サイト制作において費用を大きく左右するのは「作成するページ数」と「実装する機能」で、これらをベースに、ライティングやデザインの工数が加わり費用が算出されるのが一般的。従って、コスト削減の手段としては、ページの精査と機能要件のすり合わせが最重要ポイントとなります。
ページ数に関しては単なる削減ではなく、複数ページの統合を前提に提案するのが当社の方針です。近年では、コストを抑えたWebサイト制作の究極の形−すなわち1ページに企業に関する全ての情報を集約した「ランディングページ型のコーポレートサイト」も目にするようになりました。しかしながら、「事業内容を知りたい」「会社概要が見たい」など、目的が明確なユーザーが多い場合に情報が一緒くたであるのはかえって不都合です。また、企業としても個別で打ち出したい内容・ページもあります。これらの視点から綿密な打ち合わせを重ねることで、旧サイトで訳15あったページ数を、リニューアルで7にまで絞り込みました。
機能面については、どこまで既成のシステムを活用できるかがポイント。WordPressを中心としたオープンソースCMSや、付随するプラグインで機能要件を満たせればコストは最小限となりますが、裏を返せば既成のシステムに適応できるよう、業務フローを見直す選択肢もあります。これはDXにも精通した当社だからこその考え方かもしれません。
幸いにも今回の機械部品商社は、相談をお寄せいただいたシステム担当部署の2名が更新を行っており、掲載内容や更新フローについて一定の裁量を持っていました。そのため、既成のシステムに業務を合わせる前提で最低限のカスタマイズのみを行うことで、システム構築の費用を大幅な圧縮を実現しました。
アフターフォローで円滑な運用をサポート
かくして今回の目的であるデザインの一新と必要な機能の実装を果たしたわけですが、新しいWebサイトやシステムの運用には不安が伴うものです。万一、スムーズに機能を扱うことができなければ、いくら機能要件を満たすサイトを制作したとしても「目的を果たした」とは言えません。
今回のプロジェクトの最後を締め括ったのは、運用マニュアルの作成と更新手順の実演です。オープンソースのシステムは汎用性が高いがゆえに、「使ってみたらわかる」という側面もありますが、ローンチしたその日から積極的に活用するためには、機能の説明やアフターフォローが必須となるでしょう。
当社でお客様との窓口を務めるメンバーは皆、WebサイトやCMSに関する一定の知識を保有しています。営業担当と制作担当が明確に分かれた組織ではなく、個人でも活躍できるフリーランスチームだからこそできる迅速かつ密なコミュニケーション。日々技術が進歩し、環境が変化するWebサイト制作、そしてマーケティング領域において求められていることではないでしょうか。