導入事例は、顧客の比較検討や意思決定を後押しするだけでなく、企業の専門性や信頼性を判断する材料にもなります。だからこそ、1記事ごとに「誰に何を伝えたいのか」を明確にすることが重要です。そして、その目的によって取材すべき企業も変わります。
例えば、大手企業の導入事例は注目を集めやすく、サービスへの信頼感を高める効果も期待できます。一方で、人事異動などによって導入当時の経緯を知る担当者がいない場合や、社内確認や情報開示の制約などから、導入の経緯やサービスへの評価を詳しく掲載できない場合もあります。
反対に、中小企業では導入を決めた担当者と実際の利用者が近く、導入前の課題から選定理由、導入後の変化まで詳しく聞けることもあります。
「取材できる企業」の事例を手当たり次第にコンテンツ化するのではなく、作りたい導入事例から逆算して取材先を選定することが、導入事例制作の第一歩です。
導入事例の多くは記事として公開されていることもあり、比較的制作しやすいコンテンツに見えますが、実際には高い取材・ライティングスキルが求められます。特に難易度を左右するのが、取材先が「話し慣れているかどうか」です。導入事例では、普段インタビューを受ける機会の少ない実務担当者へ取材することも珍しくありません。
インタビューに慣れていない方の場合、質問に対する回答が「便利になった」「使いやすくなった」といった短い回答で終わることもあります。そこから「以前はどのような方法だったのか」「具体的に何が変わったのか」「なぜ他社ではなくこのサービスだったのか」と掘り下げ、記事の根拠となる具体的な情報を引き出すことがインタビュアーの役割です。
そのためには事前準備も欠かせません。営業・CS担当者へのヒアリングや取引状況などから、導入の背景やサービスへの評価を把握し、「今回の取材では何を深掘りするのか」を整理した上で取材に臨むことが重要です。
取材で有益な情報を引き出せても、そのまま文章にすれば良い導入事例になるわけではありません。実際のインタビューでは、導入前の課題について話している途中で現在の活用方法に移るなど、話題が前後することもあります。
そこで、取材で得た情報を「導入前の課題」「検討・選定」「導入」「成果」といった流れに整理し、それぞれの因果関係が伝わるストーリーへ再構成します。
また、導入事例は情報量が多く、文章も長くなりがちです。すべてを精読しなくても、見出しや強調されたポイントを追うだけで「どのような課題を持つ企業が、なぜ導入し、どう変わったのか」を把握できる。斜め読みしてもストーリーに違和感がない状態まで情報を整理することが重要です。
写真も、導入事例の信頼感や読みやすさを高める重要な要素です。取材対象者の表情や実際の利用風景などを掲載することで、実在する顧客の声であることを直感的に伝えられます。取材進行と撮影を一人で兼務するとインタビューへの集中を妨げるため、弊社では必要に応じてカメラマンを別途アサインしています。
導入事例の取材は、記事を制作するためだけの時間ではありません。普段の営業活動では聞ききれない導入の背景や評価、利用実態、今後求めていることなど、顧客のリアルな声を直接聞ける貴重な機会でもあります。
また、顧客自身に導入前後を振り返ってもらうことは、これまで提供してきた価値を改めて共有し、今後の関係を深めるきっかけにもなります。取材で得られた情報は、サービス改善や新たな提案、他のコンテンツ制作などにも活用できます。
貴重な時間をいただくからこそ、「導入事例を1本作るための取材」で終わらせず、一次情報の収集や顧客理解、今後の関係構築まで含めて取材を設計することが重要です。
次のページでは、様々なコンテンツを「動画」へ展開し、顧客の理解と接点を広げる方法をご紹介します。